2011年08月25日

カセットプラント ファクトリー通信 vol.0006 バックナンバー  2008/04/29発行

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   カセットプラント ファクトリー通信 vol.0006  2008/04/29発行
        

               
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●目次
  【1】青森 弘前便り(その1)
  

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【1】青森 弘前便り(その1)
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このたび、2006年5月に弘前で開催された
『建築家・前川國男 生誕100年祭<弘前で出会う 前川國男>』
の記念誌が発行されました。
この企画では、前川氏の建築のひとつであり、当日会場としても使用された
弘前市民会館のエントランスホールの窓に、山口啓介氏のカセットプラント
作品が展示されました。
今回は、この企画の中心メンバーとして関わられた「前川國男の建物を大切に
する会」の折谷小百美さん(ファクトリー事務局メンバー)に当時のことに
ついて記していただきました。



          ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○


2006年5月14日。
ようやく春を迎えた津軽の、りんごの花の咲く季節。
青森県弘前市で『建築家・前川國男 生誕100年祭<弘前で出会う 前川國男>』
が開催された。
前川國男の101回目の誕生日であるこの日の気持ちよさは格別だった。
穏やかに晴れ渡り、この日特別に開け放たれたテラスのドアからは心地よい
春の風が優しく流れ込んでいた。
会場に展示された「カセットプラント」はまさに生誕100年祭の象徴だった。
溢れるほどの祝福の花々。降り注ぐ陽の光を反射してキラキラと光る水面のよ
うに、きらめく「カセットプラント」がピュアなピアノの旋律と共に今も私の
心の目に映る。
今にして思えば、当日に至るすべてのプロセスが偶然に導かれた旅の始まりで
あった。
翌年も山口氏は青森で個展を開催することになるのである。

弘前市を拠点に活動する「前川國男の建物を大切にする会」は、20世紀を
代表する建築家、ル・コルビュジエに師事し、日本の近代建築を先導した
建築家・前川國男が、母方の郷である弘前に残した8つの建物を大切に思い、
大切に使い、多くの方とその素晴らしさを分かち合いたいと願う有志が集まり
発足した会である。弘前市内の前川建築を巡るバスツアーなどの活動をして
きたが、2005年に前川が生誕100年を迎えたことを機に、弘前での
生誕100年祭を計画し、作品のひとつである弘前市民会館を会場に、誕生日
のお祝い、バースデーパーティーをイメージして、祝福とともにこの建物を
味わいたい、というコンセプトで、準備をすすめていた。

山口氏との出会いは偶然である。
当時私は「前川國男の建物を大切にする会」(以下「前川の会」)のメンバー
として、生誕100年祭には、弘前市民会館のホワイエを活かした何かができ
ないかと考えていた。
通常、市民会館などの多目的ホールは、主要な大ホールの音響設備や内装など
が注目されるが、弘前市民会館は大ホールの素晴らしさは言うまでもないが、
さらにホワイエが際立って美しいのである。ホワイエに注目を集め、
その空間を思う存分に活かした何か・・・美術作品の展示を考えたが、通路
や休憩所としての場でもあるため、通行の妨げになったり、危険な要素が
あってはならなかった。
展示時間の制限もあった。会場を借りているのは当日と準備のためとして前日
のみ。当日は朝から開場となるので、展示はすべて前日1日で完了することが
条件だった。

2006年5月の開催を控え、内容が決まらないまま落ち着かない日々を過ご
していたある日、朝テレビをつけると、夥しい数のカセットケースの美術作品
が映った。
画面にアップされたカセットケースには植物、花びらや葉っぱが一つ一つ丁寧
に収まっている。
透明感と瑞々しさがダイレクトに響き、心を奪われた。
見た瞬間、この作品だと感じた。
すぐに会のメンバーに連絡し、夜の再放送を見てほしいと伝えた。
2005年10月16日放送のNHK総合「新日曜美術館」のアートシーンで
第3回福岡アジア美術トリエンナーレが紹介された時のことである。時間に
すればわずか1、2分足らずかと思う。
後日、この時のカセットプラントは生花を使用していなかったことが
山口氏からお聞きして判ったが、その時なぜか私には、瑞々しさが強く印象づけ
られた。
私は生花だと思い込み、生命の瑞々しさに勝手に圧倒された。

しかし、ここまで激しく心を揺さぶられたにもかかわらず、行動を起こすまで
には相当な時間がかかってしまった。美術の世界のことは全くわからないため、
何をどうすればよいのか、まずはご本人に連絡を取りたかったが、ネットで検索
してはみたが連絡先が出ているわけがなかった。
頭の中では山口氏の反応が気になっていた。このような申し出にどのような反応
をされるのだろう。
もしかしたら、とんでもない非常識なことなのか、見当がつかなかった。
そんな不安もあってぐずぐずしていたが、
そうこうしているうちに年が明け開催日がせまってくるとさすがに
焦り始め、準備を考えると、もうタイムリミット、限界だった。
行動を起こしたいが、どうやってご本人と連絡をとったらいいのか。ネットでは
ギャラリー池田美術というところでのインタビューが写真入りで見ることができ
たが、銀座の画廊!と思っただけで、電話するのがためらわれた。ところがふと、
テレビで見た時の会場となった美術館へ電話してみようと思い付き、電話をして
みた。電話に出られたのは、福岡アジア美術館の職員の方で、こちらの思いも
あってか、親切な対応に心が救われた。彼の指示で、ともかく開催主旨を文章に
してFAXでお送りください、とのことだったので、急いで文章を書いてFAX
した。
その翌日、山口氏から直接電話を頂いたのである。
開催日まで4か月を切っていたが、こちらの申し出をその場で承諾して下さった。
「カセットプラント」が決まったのだ。
FAXの日付は2006年1月17日になっている。電話は1月18日のことで
ある。
この電話の翌日、山口氏は「第3回福岡アジア美術トリエンナーレ」のイギリス
巡回展の現地制作と展示のため、イギリスへ出発された。
明日から1ヶ月イギリスへ行きます、と聞いた時には、電話が1日ずれていたら、
準備期間から考えても、弘前での「カセットプラント」はなかったかもしれない、
今日連絡が取れて本当によかったという安堵と同時に出発前日というタイミング
に照準を合わせたかのような、なにかの意図のようなものが感じられてならな
かった。  (その2 へ続く)

折谷小百美

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記念誌のお問い合わせ先
前川國男の建物を大切にする会
〒036-8227
青森県弘前市桔梗野1丁目13−13
URL http://www.geocities.jp/tigra_97/


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 発行   カセットプラント ファクトリー事務局

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posted by cpf at 23:32| Comment(0) | ファクトリー通信
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